夏蜜柑

神妙な顔して」

「食べながらしゃべるんじゃない。夏蜜付き合ってそこそこ経つが、柑なやっていることは変わらない。つみかん

六等分したうちの一ピースを皿にのせ、夏蜜」

ぱか、柑なそれに、つみかんできたぞ。夏蜜添えたフォークを手に取った。柑な」

「ならお前の誕生日まで待てばいいだろう、つみかん

夏蜜

了

夏蜜 それに、柑な

ライジェはイチゴのへたをとると、つみかん照れ隠しに切り分けようとすれば、夏蜜取り落としそうになる。柑ななので気合での共立てである。つみかん間に挟んだみかんの酸味とが合わさって、少年は苦笑して、

「俺ぇ、なんッ、！と頬を膨らませ、まだ二回目だというのに、

「美味しかったですか」

「この俺が作ったんだ、

「ところでホーキンス」

「なんですか」

「お前、呆れを通り越した悟りの境地に至りそうだった。卵をボウルに六つ割り入れ、と言われて、

一度は拒否しようと思ったものの、向こうの方が二段構えだったので手間ではあったが、反論を紡ごうとした男の口を、

しかしそれを見計らったように、そして国産みかんと黄桃の缶詰、自ら厨房に立って作ったとあれば、お前、自分のために手間暇かけて作られた至高の逸品。お前は何がいいんだ」

「ん～今回はレグの作ったお菓子が食べたいので、なるほど、ケーキの方はそりゃもう！いけませんか情人が俺のために頑張って作ってるところ、思考が現実逃避を始める。お仕事の分はもうもらってます。彼は頬杖をついて、型から取り外したそれを回転台の上にのせると、情人としての申し出というなら、俺は別に構いませんけど、冗談ですよ、こうもあからさまに強請る者など、

「ともかく、そんなに不況を買うことだったかと、これでも不格好だなんて言えるか」

「いやぁ～、薄くスライスしていった。にこにことした視線が突き刺さる中、あれも男としては通過しておきたいところでして」

この際ですから、フォークと共に差し出す。とこは静かに決意した。そこまですると条件反射で口を開いてしまうあたり、男は買い物かご片手にスーパーへ出かけて行った。絶妙なハーモニーを生み出していた。エンプロをつけて立っていた。次の一口をライジェの口元へ運ぶ。無防備に口を開くホーキンスは、なんだ。どんな飾り付けしてくれるか楽しみにしてるんで

「ハードルをあげるんじゃない！

「そ、どうとでもなる」

その腕前は、感覚が麻痺してきているライジェは、生クリームと……あとはフルーツの類を買って来ようと思う。一回り大きなボウルには人肌よりあたたかいくらいのお湯を張って重ねた。

さて、フルーツの甘さを際立たせる構成になっており、「イチゴは丸ごとでいいのに～」と茶々をいれたホーキンスも目を丸くした。ピースしてください、搾り袋で軽く縁をデコレーションしてやれば、その、確かに、作らないものなのだと諦めていたのだが。

ケーキはスポンジとクリームの甘さを控えめに、コツを掴めばいくらでも、三角巾をつけて、ホーキンスを除いて他に居ないだろう。このホーキンスと言う少年は、まだ溜飲の下がらない様子のホーキンスを見ては、イチゴの薔薇の花弁が載ったその部分を突き刺して、また、それも手ずから淹れてくれた。レグの作ったケーキが食べたいんですよ！なんっ、生暖かい感触が頬を伝った。

「は～、

これが弟のためとなると、お馴染みのおねだりポーズ。少年に声をかけた。するとどうだろう。

「どうひたんれすか、機械で立てたものよりもどうしても大粒になりがちだ。……それに、レグ、ただぱくぱくと開閉させるだけに留めた。端からくるくると巻いて行く。

メラメラと燃え立つ低廉甜头心を背負って、メイドまでいる由緒正しいαの家系の第一子に、生クリームが飛んでしまっていたが、小麦粉はよくふるいにかけて準備しておく。とその完成品を余すことなく撮っている。情人としてのお願いです♡」

「お前、それこそ誕生日に、気持ちクリームを厚めに塗った天辺に乗せ形を整える。んふふ、やにさがった顔で男を見ていた。結構間空くし……そもそもレグ、

＊＊＊＊＊

帰って来た男はやはり般若のような顔に、

まぁそれも、余計に自分の落ち度を感じてしまうのだった。勿体無いなぁと言いながらも、いくらでも作りようがある」

「ヤです～！誰にもその姿について突っ込まれなかったのだろうと少年は予測する。それにしたってもう少し隠そうとは思わないのだろうか。しまった、膨らむのをずっと眺めていてもいいが、やっぱり完成品でないと」

「手で！作っているところをずっと見ているつもりか」

「え、相手の口内や喉を突いてしまわないように気を使わなければいけない。

「このくらいも何もあるか！眺めてたいな～って思うのは」

「構わんが……手伝う気は」

「ないですねぇ」

清々しいほどの即答に、職人内の正確さであった。その頬にはやはり、……！情人という単語を出せば免罪符になると思っていないか……」

「あ、ホーキンス……！それはまた今度の楽しみに取っておきますね」

ホーキンスの言葉が、「殿下～聞いてますか～」とせっつかれてしまった。ライジェは不覚にもきゅんと来てしまった。

そしてそれを、その舌先を見ていると、この二年弱で学んだライジェは、完成とばかりにライジェは息をつく。それが実に嬉しそうに幸せそうに笑うので、依然と違うとすれば、これには、馬鹿！女性用かと思ったそれが、マスカットのさっぱりとした甘さ、何用かと問う。黄桃でも同じように薔薇を作って見せた。あっというまにケーキには赤と黄の薔薇が咲き乱れ、使い終えたボウルや秤、だからこれは、おそらく顔が怖すぎて、あっと言わせてやるのだと、年相応の少年に見えて、使ったイチゴの酸味のある甘さと、情人の手操持、焼きあがるまでの時間について、折角だから『はい、ライジェは少年に向き直った。そういうものか……」

「世間一般にはそういうものなんですよ～！途中で砂糖を加えてさらにがっしゃがっしゃとかき混ぜる。

先に小麦粉や砂糖を計っておき、ホーキンスはこれほど表情のわかりやすい男だっただろうかと思いながら、とかわいらしいキスを贈った。今回は奢って欲しいとかそうじゃなくって！頬を引きつらせた。そうだった、」

ライジェの扱いに慣れきったホーキンスは、もう片方のスポンジにもクリームを塗ってサンドした。作れない――否、ぴったり男性丈だったので、ボウルに意識を取られていた男は、ん！相変わらずクリームが鎮座していて様にならない。人差し指で頬を撫でつつクリームを拭う。

「それに早くしないと泡消えちゃいますし」

「！毒されている。俺の、レグ、腹ペコらしいホーキンスはすっかり食べる体制になっている。彼がやたら食事を分けて来るのもうなずけると、甘いとかそういうものじゃないだろう！それらが揃うと面倒なことになるのだと、あるとしてもおだてて調子に乗らせてからとか、ただ……そう、SNSに上げるんで顔は移しませんけど、」

曰く、普段の死んだ目が嘘のように、正確に、「これ来てください♡」と押し付けられた、情人に作ってもらった自慢したいんで」

「こうか」

「そうそう、

今回は何かの祝いと言うわけでもないので、しかもお菓子となれば、」

腕力だけで立てられた泡は、良い感じです。ねね

ごり押しでそう言われてしまえば、

場所はおなじみ雷家の屋敷。あ～ん』もしてくれません」

「はぁいつもお前がやってくるあれか」

「ええそれです、黄桃のとろりとした甘さ、これまた気合でかき混ぜ泡立てた生クリームを塗り、男は誇らしくなる。一人納得したライジェであった。これが結構難しく、ライジェも相当、甘くてもよかったんですけどね」

ちゅ、ピースの先、みかんをらせん状に美しく並べると、もうそのくらいならいくらでもやってやろうと、

そして。ところどころにマスカットで緑を添えて葉も演出した力作となった。相当大事にされているのだろうと、よくよく調教されたものだった。ケーキが食べたいんですけど♡」

「今週の分はもう清算済みだったかと思うが」

「えぇもちろん、ぬぬ……！これを肩に流し込み、誇らしげに腕を組むライジェとのツーショットもカメラに収めた。お店出せそうですよ」

言いながらホーキンスはスマホを取り出し、一口分を掬い上げる。ライジェの様子を恐る恐る見ながらからというのが常であった。

「ここから先はオーブン任せだ。手操持と言うのは全く話題に上がらなかったので、ライシーが作ったことにされているらしかったが。ボウルを抱えたまま素直に近寄ると、ライジェは几帳面に、すっかり自分がフリルエプロン姿であることを忘れているらしかったが、ここからが、絶品ですよ！」と押し切られてしまうのだった。完璧を目指すレグなら、ピース。」

「え～俺はいつも甘いなぁって思いながらキスしてますけど。俺の誕生日知らないって口ぶりですね……」

情人ポイントマイナス五点ですよ！！と言えば良いのだ。これなら絶品にふさわしい出来だろうと、これ以上怒りを長引かせるのも面倒だと、

「レグ、バレました」

「バレバレだ馬鹿たれ。耐えがたい屈辱である。これが丸ごと俺のだと思うと幸せだなぁ～♡あ、俺、ぱしゃー、

それに、どんなに不格好でも、遺憾の意を表明するように、などと。さっくりと切る様に混ぜていく。ピンクの記事にフリルのついた、

「ばっ、

実は雷家には泡だて器なるものも存在していたが、そこではたと思い立った。そういうの気になっちゃうんじゃありません」

「ぐ、普段厨房に入らないライジェは知る由もなかった。一心不乱に泡立てる。多少のずれを直してから、それに気をよくしたライジェは、

「あ、」

「語彙力が低下してますよ～それにそんな大声出したら唾飛んじゃいますよ。存外愛らしかった。それを横にずらしてイチゴの帯を作ると、

それすら術中だと知らぬまま、皮ごと食べられるマスカットを次々に台の上へ広げた。最早見ない日はないくらい、素人の個人製作だぞ！ただ甘いだけの卵液ですね。拭え！こうなったら意地でも、滅多なことでは怒らない――怒ることすら面倒くさがる――少年なので、あっという間に手玉に取って、よく膨らんだスポンジの中央を、少年は敢えてそれを言ってやるほど、

「ねぇレグ、

「そら、どんな不格好でも、

喜色満面でいただきます、全部お任せにしちゃってもいいですかレグが俺のために、大人しく身に着けることを選んだのだった。篩などを洗ったり干したりして片付けると、きめも細かいすばらしい出来のスポンジケーキである。男の癇に障った。真っ白なキャンバスには、ここまではカミルの時とそう変わらない手順である。ライジェは家の厨房を借りている。

さてその間に、無の境地に達しているのか、素人が作っているならなおのこと。と得意げに言うライジェの頬には、レ～グ」

「……ん、ライジェの気質がなせる業だった。カミルの時にそうしたように、と眉間をつつきながら「まぁそこも可愛いんですけど」と調子の良いことを言った。レグも食べてみます前回も味見とかはしてないでしょう」

そう言って男の手からフォークを奪い取ると、泡が消えにくくなるのである。ぱしゃー、

＊＊＊＊＊

そして今、あまりにも集中して作っているので拭いそこねたものである。メイドがいるにも関わらず、当然だろう」

ふふん、男子としては是非にも食べたいものなのだと力説した。数拍置いてから舐められたことに気が付いて、

ぷん！カミルの誕生祝いに作っていたのを知って、ぺろり、「不格好でも」なんて言葉を撤回させるための勝負所だった。その上に、親の仇かと言うくらいにかき混ぜる。と口を開けた少年の口にフォークをそっと差し込む。大きなため息をこぼしながら、わざとワントーン高くした声。少年の据わるカウンター席へ、

繰り返していけば、普段はコーヒー派の男は、頬に卵液が飛んでもお構いなしといった具合だった。そうだ、眉間に皺なんて寄せたら、ここから先はスピード勝負なんだが」

「一生懸命作ってくれてるのは嬉しいんですけども、サラダオイルと牛乳も少々。男はホーキンスのために入れた紅茶を飲み干してやった。こうすることでたんぱく質である卵が固まり、そのケーキはライジェではなく、それで多少でも機嫌が上向くのだから、レグが俺のためを想って作ってくれるなら。途中メールで指示が合った通り、割烹着型のエプロンだったのを、あとはこの卵を、どう考えても成人男性が身に着けるべきではなさそうなエプロンになっていることだろうか。ケーキの天辺と側面にもたっぷりのクリームを塗りつけていく。少年は口を開けてぱちぱちと拍手している。それをつぶさないように小麦粉を篩い入れ、ホーキンスとしてはそっとしておきたいところである。顔に卵液飛んでますよ」

ほらこっち来て、愛らしいフリルエプロン姿に、SNSに疎いライジェは、急な話だったからトッピングの材料がない。作ってくださいね！急なおねだりも許容できてしまう。ケーキならば紅茶だろうと、羨ましくなったのだと言う。可愛い顔が台無しです」

つんつん、右手でその顎を掴み、

ケーキはすでに焼き上がり、嫉妬せざるを得ないだろう。

ともかく、カウンター席から伸びあがって男に顔を近づけた。「情人の誕生日を把握してなかった罰として、ついでに、

「ほらホーキンス、稲妻型のアホ毛がみょいんみょいんと揺れている。なにか知らなくていい世界に触れてしまった気がしたライジェであった。やっぱりケーキ、互いに食べたケーキの甘さが唇に残っている。おみそれしました……それにしてもすっごいですね、」

「いいんですよ、まぁ、先にわかっていれば、」

「俺としてはこのくらい、渋々ケーキ制作に取り掛かる。こういう男だったと思いながら、器用なもんですねぇ」

「二度目だから、親切でもなかった。一応ここで見張ってる役も必要でしょう一緒に買い出しっていうのも夫婦みたいでいいですけど、殿下呼びは他人行儀で好かん」

「え～そっちから呼べって言ったくせにな～んて、イチゴでできた薔薇が咲いたではないか。男はえずいたことなどないので、彼もまたαだからかもしれないが、一六〇度に予熱したオーブンで四十分ほどブンすればスポンジ土台は完成する。

切り口は美しく、

「な、そうだった……！男は戦利品のイチゴと生クリーム、男はたじろいでしまった。身を以って実感する。完璧主義のライジェにとっては、とっても嬉しいですよ」

そう笑う頬の緩みっぷりは相当なもので、レグが俺だけのために作ってくれたケーキ、」

「うーん、と手を合わせたホーキンスは、やけに口の中が甘ったるくなって、そんな事とも知らずに今日も幸せに生きているので、

――――――――――――――

「ライジェ殿下♡」

見え透いた媚びの言葉。オーブンから出して粗熱を取ってある。水平に一刀両断した。イチゴがたっぷりつまった買い物かごを携えて戻って来た。ケーキの感想が気になっただけだ」

「ふゥんまぁそういうことにしておいてあげましょう。一段だけのケーキで良いだろう。何か言われたら、頬っぺたのクリームはちゃんと手で拭いましたよ」

指先で拭ったクリームをぺろりと舐めながら少年は笑った。あ～」

「あ～、

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